【甲子園2026準々決勝】横浜高校vs花巻東を徹底分析 「ビッグイニングの横浜」対「1点を奪う花巻東」

第108回全国高校野球選手権大会は、いよいよ準々決勝へ。
2026年8月18日(火)13時開始予定の第3試合では、横浜高校(神奈川)と花巻東高校(岩手)がベスト4進出をかけて激突する。横浜は2年連続、花巻東は3年ぶりの8強入りだ。
両校とも投打の総合力が高く、ここまで3戦全勝。ただし、勝ち方はかなり違う。
横浜が一気に試合を動かす「ビッグイニング型」なのに対し、花巻東は走塁、犠打、進塁打、犠牲フライまで使って1点ずつ削り取る「圧力型」。
このスタイルの違いこそが、準々決勝最大の見どころになりそうだ。
🔽 横浜と花巻東、甲子園3試合の数字を比較
横浜は沖縄尚学に7-2、日南学園に10-1、霞ケ浦に5-2。花巻東は新田に4-2、岡山学芸館に4-1、英明に4-0で勝利している。両校の3試合を集計すると、戦力の性格がかなり鮮明になる。
| 項目 | 横浜 | 花巻東 |
|---|---|---|
| 3試合得点 | 22 | 12 |
| 3試合失点 | 5 | 3 |
| 安打 | 33 | 29 |
| チーム打率※ | .327 | .319 |
| 犠打 | 11 | 7 |
| 盗塁 | 4 | 11 |
| 失策 | 1 | 0 |
| 本塁打 | 1 | 0 |
※各試合のSportsNavi速報値をもとに当サイト集計。速報値のため公式記録と異なる可能性があります。
数字だけを見ると、攻撃の最大出力は横浜、失点抑止と機動力は花巻東という構図になる。
ただし面白いのは、横浜も「強打一辺倒」ではないことだ。
霞ケ浦戦では6犠打。日南学園戦でも4犠打を記録している。つまり横浜は33安打を放つ強力打線でありながら、必要と判断すれば送りバントでアウトを1つ差し出してでも得点圏へ走者を進める。
一方の花巻東は、そのさらに先を行く。
「ヒットを打たなくても点を取る」こと自体を攻撃手段にしている。
🔽 横浜最大の武器は「一巡した瞬間」に起きる爆発
横浜の3試合には、非常に興味深い共通点がある。
沖縄尚学戦では6回に4得点。日南学園戦では7回に4得点、さらに9回に5得点。霞ケ浦戦でも6回に4得点した。つまり、甲子園3試合すべてで4点以上のビッグイニングを作っている。
これは単なる偶然とは考えにくい。
横浜打線は、一度相手投手の球筋を見切り、下位打線が出塁すると、9番から1番へ戻ったところで一気に攻撃のギアが上がる。
その象徴が9番・千島大翼と1番・小野舜友だ。
霞ケ浦戦では6回2死満塁から千島が2点適時打。続く小野が2点二塁打を放ち、一気に4得点した。日南学園戦でも7回に千島の三塁打から小野の適時打へつながっている。
一般的には「1番から攻撃が始まる」と考えがちだが、横浜の場合はむしろ、
8番→9番→1番→上位打線
という“裏側から始まる打線”が怖い。
花巻東から見れば、7、8番を抑えたからといって安心できない。9番千島を出すと、一気に小野、池田聖摩、川上慧へつながってしまう。
🔽 小野、川上、江坂だけではない 横浜打線の「切れ目のなさ」
3回戦終了時点の大会打率を見ると、小野が.500、川上が.455、江坂佳史が.400、脇山魁音が.455、千島が.444。主力だけでなく下位にも高打率の選手が並ぶ。
日南学園戦では江坂に満塁本塁打も出た。長打で一気に4点を奪える打者がいる一方、小野や千島のように状況に応じた打撃もできる。
さらに面白いのが2番・小林大雅だ。
3回戦終了時点の大会打率は.000。それでも送りバントや四球、走塁によって攻撃に参加している。
「2番打者は必ずしもヒットを打たなくてもいい」という設計なら、横浜打線を見るときは打率だけでは不十分だ。
小林大がアウトになりながら走者を進め、その後ろの池田、川上、江坂に走者を残す。
ここまで含めて横浜の攻撃システムと見るべきだろう。
🔽 花巻東は「適時打なしで4点」がすべてを物語る
対する花巻東の3回戦・英明戦は、このチームの特徴を説明する教材のような試合だった。
結果は4-0。
ところが、長打なし、適時打なし。それでも4得点している。
2回は内野ゴロ、3回も内野ゴロ、6回は重盗から犠牲フライ、8回も犠牲フライ。7安打しか打っていないのに、4度の得点機を確実に得点へ変えた。
これは横浜にとって非常に厄介だ。
普通なら「長打を警戒」「クリーンアップを抑える」で失点リスクを減らせる。しかし花巻東の場合、
四球 → 盗塁 → 進塁打 → 犠飛
でも1点になる。
つまり横浜投手陣は「打たれなければ大丈夫」ではない。
花巻東戦では、走者そのものを出さないことが重要になる。
🔽 花巻東の11盗塁は、単なる「足の速さ」ではない
花巻東は甲子園3試合で計11盗塁。特に岡山学芸館戦では7盗塁を記録した。
3番・赤間史弥、4番・古城大翔という強打者を抱えながら、クリーンアップの走者まで積極的に動かす。いわゆる「足のある1、2番だけが走るチーム」ではない。
これが厄介なのは、盗塁成功そのもの以上に守備側の意識を分散させる効果があるからだ。
一塁走者を警戒すれば投手のクイックが速くなる。牽制が増える。二遊間の守備位置が変わる。捕手も変化球を要求しにくい場面が出てくる。
さらに一、三塁では、一塁走者のスタートに二塁送球するのか、それとも三塁走者を警戒するのかという判断まで要求される。
英明戦で実際に重盗を成功させていることを考えれば、横浜守備陣に対しても花巻東が“一、三塁から守備判断を揺さぶる”場面を作ってくる可能性は高い。
花巻東の盗塁は「一つ先の塁へ行く」だけではなく、「次の一球を打ちやすくする」ための戦術でもある。
🔽 花巻東の打線は赤間・古城が中心
花巻東は3回戦終了時点で、赤間が打率.455、古城も.455。久保村冠太が.375、菊池楽人も.400と、中軸から下位までヒットを期待できる打者がいる。
特に赤間は投手としても英明戦に先発し、6回5安打無失点。投打双方でチームの中心的存在となっている。
しかし横浜戦では、赤間や古城が長打を打てるか以上に、その前に走者がいるかどうかが重要だ。
赤間の打席で一塁が空いているのか。
それとも一、二塁なのか。
さらに二、三塁なのか。
同じ赤間との対戦でも、横浜バッテリーへのプレッシャーはまったく変わる。
🔽 投手力比較 横浜には「試合後半のジョーカー」織田翔希
横浜の最大のアドバンテージは、やはり織田翔希だろう。
初戦の沖縄尚学戦では8回2/3を投げ12奪三振。日南学園戦では3回無失点の救援。霞ケ浦戦では6回から登板して4回を無安打・7奪三振・無失点に封じた。3試合を集計すると15回2/3で23奪三振となる。
しかも霞ケ浦戦では、平均球速150.6キロ、最速154キロ。140キロ台のカットボール、130キロ後半のスプリット、スライダーも交えたと報じられている。単に「速い直球一本」の投手ではない。最速157キロ右腕として注目されるだけの投球幅がある。
花巻東からすると、一番避けたい展開は、
5回までに横浜がリード → 6回から織田
だ。
霞ケ浦戦で実際にこの形になり、織田は12人の打者から7三振を奪い、被安打0だった。
花巻東が勝つためには、「織田が出てくる前に点を取る」ことが極めて重要になる。
🔽 実は花巻東戦に向いている? 小林鉄三郎の「与四球0」
一方で見逃せないのが2年生左腕・小林鉄三郎だ。
日南学園戦、霞ケ浦戦と2試合連続で先発し、ともに5イニングを担当。霞ケ浦戦では7安打2失点だったものの、5奪三振で与四球0だった。日南学園戦でも5回を投げて与四球0。初戦の短い救援を含めても、今大会ここまで与四球を出していない。
これは花巻東との相性を考える上でかなり重要な数字だ。
機動力型のチームに対する一番悪い入り方は「四球で一塁に走者を置くこと」。
花巻東はそこから盗塁、犠打、進塁打を組み合わせて1点を奪える。
逆に言えば、四球を与えず、花巻東に「まずヒットを打たなければ走者を出せない」状態を強いる小林鉄は、戦術的には非常に面白い先発候補である。
🔽 横浜の先発予想 本命は小林鉄三郎
筆者の予想では、横浜の先発は小林鉄三郎を本命とする。
日南学園戦、霞ケ浦戦と「小林鉄が先発し、試合中盤から織田」という継投を2試合続けている。霞ケ浦戦でも小林鉄が5回、織田が4回だった。
この継投の最大のメリットは、単なる投球数の分散ではない。
左腕・小林鉄から150キロ超の右腕・織田へ変わることで、左右だけでなく、球速帯そのものが一気に変化する。
打者からすると、前半に作ったタイミングを後半で完全にリセットしなければならない。
しかも花巻東の強みは中盤以降の機動力。そこに三振を大量に奪える織田を投入すれば、「走者を進めるための打球」そのものを発生させにくくできる。
そのため予想は、
小林鉄三郎が4~5回 → 織田翔希が4~5回
という形を第一候補としたい。
ただし準々決勝の重要性を考えれば、最初から織田を投入する可能性も十分ある。8月16日の霞ケ浦戦では50球だったため、17日の休養日を挟んで18日を迎える。
🔽 花巻東の先発予想 本命はエース左腕・萬谷堅心
花巻東の投手運用は横浜以上に読みにくい。
初戦の新田戦では萬谷堅心が先発して7回。2回戦の岡山学芸館戦は2年生右腕・菅原駿が6回1/3を無失点。3回戦の英明戦では赤間史弥が初先発し6回無失点だった。
つまり花巻東は、甲子園3試合で3人の異なる投手を先発させている。
これは準々決勝で非常に大きな強みになる。
菅原を2回戦で先発させた際、佐々木洋監督は長いイニングだけを求めず、後ろに投手が控えていることを踏まえた起用方針を語っている。実際、花巻東は「先発完投型」ではなく複数投手を組み合わせられるチームだ。
それでも横浜戦の本命には左腕・萬谷を推したい。
理由は横浜の打順構成だ。
霞ケ浦戦では1番小野、2番小林大、3番池田、4番川上が全員左打者。6番田島も左。上位から左打者が続く。
左腕を先発させれば必ず抑えられるわけではないが、横浜の左打者に対して外角へ逃げていく軌道を多く見せられるメリットはある。
そして萬谷は英明戦で40球、3回1安打無失点。赤間が94球を投げたことを考えると、登板間隔と投球数から見ても萬谷は有力候補だ。
予想するなら、
萬谷 → 菅原 → 赤間
あるいは、
菅原 → 萬谷
という継投も十分考えられる。
🔽 勝負を分けるポイント① 花巻東は小林鉄から走者を出せるか
この試合で最初に見るべきなのは、横浜の先発が小林鉄だった場合の花巻東の1巡目だ。
小林鉄は四球が少ない。
花巻東は走者を出して初めて、盗塁・バント・進塁打・重盗という戦術を展開できる。
したがって花巻東としては「待って四球」というより、甘い球を早いカウントから捉えて出塁する必要が出てくる可能性がある。
逆に横浜からすれば、単打1本は許しても、四球や失策を重ねなければいい。
花巻東にとって一塁走者1人は「攻撃開始」の合図だが、横浜が一塁で止めたまま打者との勝負に集中できるかがポイントになる。
🔽 勝負を分けるポイント② 「6回」に花巻東がどう動くか
横浜の3試合を見ると、「6回前後」が非常に怖い。
沖縄尚学戦は6回4得点、日南学園戦は7回4得点、霞ケ浦戦は6回4得点。
これは投手が打者と2巡、3巡と対戦し始めるタイミングでもある。
花巻東として重要なのは、先発投手がまだ抑えているからといって引っ張り過ぎないことだろう。
5回まで1失点でも、横浜は一度打線がつながると4点を一気に奪う。
「打たれてから継投」では遅い可能性がある。
4~5回、横浜の打順が9番千島から1番小野へ向かう場面で、萬谷から菅原、あるいは菅原から萬谷へ先手で交代する。
そんな“イニングではなく打順で投手を替える”継投も十分考えられる。
🔽 勝負を分けるポイント③ 花巻東は「3アウトの使い方」が独特
英明戦で花巻東が4得点した方法を見ると、このチームがアウトを単なる失敗とは考えていないことが分かる。
内野ゴロで1点。犠牲フライで1点。
つまり三塁に走者さえ置けば、27個あるアウトの1個を1点に交換するという考え方ができる。
横浜守備陣としては、一、二塁よりも「一、三塁」「二、三塁」を作らせないことが重要だ。
特に無死一塁から盗塁され、送りバントで一死三塁となれば、ヒットを打たれていないのに内野ゴロひとつで失点する。
横浜が花巻東に対して警戒すべきなのは、長打そのものより「三塁到達率」と言っていいかもしれない。
🔽 守備力では花巻東がわずかに上か
甲子園3試合で花巻東は失策0。
横浜も失策は初戦の1つだけで、日南学園戦、霞ケ浦戦はいずれも無失策だった。双方とも守備力は高い。
ただし、このカードでは通常の失策数だけでは測れない。
花巻東が走者を動かした際、横浜が、
「投げるのか、投げないのか」
「一つアウトを取るのか、本塁を警戒するのか」
という瞬間的な判断を正しくできるか。
逆に花巻東守備陣は、横浜の高速打球に対して単純な捕球ミスをしないことが求められる。
横浜は打球速度で守備を壊し、花巻東は走塁で守備判断を壊しにくる。
守備という同じ分野でも、両校が相手にかける圧力はまったく違う。
🔽 試合展開を予想 前半は接戦、5~7回が最大の山場か
筆者が最も想定している展開は、序盤はロースコア、試合中盤に横浜が動かす形だ。
1~3回は0-0、あるいは1-0。
花巻東が萬谷、小林鉄あるいは織田の立ち上がりを攻め、先制する可能性も十分ある。
4~5回になると両打線が相手投手に2巡目となり、花巻東は盗塁やバントを増やして1点を取りにくる。
そして最大のポイントが5~7回。
横浜は千島から小野へ打順がつながった瞬間にビッグイニングを作る力がある。一方、花巻東はそこを複数投手の継投で細かく断ち切ろうとする。
さらに横浜が織田を投入すると、それまでとは球速帯が一変する。
「花巻東が織田登板までに何点持っているか」
これが試合全体を左右すると見る。
🔽 最終予想は横浜4-2花巻東
総合的には、横浜がわずかに優勢と予想する。
筆者予想の勝率イメージは、
横浜 58% ― 花巻東 42%
程度。
決して大差ではない。
横浜は打線の最大出力と織田という圧倒的なカードを持つ。一方で花巻東には、左腕をぶつけやすい横浜の打順構成、3人以上を使える投手層、そして11盗塁に象徴される機動力がある。
本命のスコアは、
横浜 4-2 花巻東
と予想する。
想定する展開は、4~5回まで1-1前後。中盤に横浜が下位打線からチャンスを作り、千島、小野、池田、川上の並びで2~3点を奪う。その後を織田が締める形だ。
逆に花巻東の勝ち筋はかなり明確である。
5回終了時点で2-0、2-1などリードしていること。
そして横浜に4点イニングを作らせず、萬谷・菅原・赤間の継投で3-2程度の試合へ持ち込むことだろう。
🔽 「強打の横浜vs機動力の花巻東」だけでは語れない準々決勝
この試合を単純に「横浜の強打対花巻東の機動力」と見るだけでは少しもったいない。
横浜は甲子園3試合で11犠打を記録しており、実は非常に細かい野球もする。一方の花巻東も赤間、古城を中心に高打率の打者がそろい、「足だけ」のチームではない。
両校とも相手と同じことができる。
そのうえで横浜には一気に4~5点を取る爆発力があり、花巻東にはヒットが出なくても1点を作る能力がある。
だからこそ注目したいのはホームラン数や球速だけではなく、
一塁走者への牽制、送りバントのタイミング、9番打者の出塁、三塁走者を巡る守備判断、そして5~6回の継投。
こうした一見地味なプレーの積み重ねが、準々決勝の勝敗を決める可能性は高い。
横浜の「一気に試合を壊す4得点」と、花巻東の「1点を4回積み重ねる野球」。
まったく異なる“4点の取り方”を持つ2校の対戦は、今大会でも特に戦術的に面白いカードになりそうだ。
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